基本情報
PS3版「ICO」ソニー・コンピュータエンタテインメント
発売日:2011年9月22日
ジャンル:アクション・アドベンチャー
プレイヤー人数:1人 ※クリア後に2P側でヨルダを操作可能
ストーリー
イコには角が生えていた。
角が生えているのは村の中でもイコただ一人。
村のしきたりで、角の生えたこどもが生まれると、そのこどもは海の上に聳え立つ誰もいない霧の城にいけにえとして捧げられることになっていた。
そして今日、13歳の誕生日に3人の神官に連れられ、イコはその霧の城へと向かった。
霧の城に到着し、中へと進むと、沢山の棺が納められた広間へと辿り着いた。
その沢山の中の棺の一つにイコは入れられ、ふたを閉ざされる。
やがて神官たちの足音も聞こえなくなり、寂しさから目を閉じると突然部屋が揺れ始めた。
その揺れでイコを収めていた棺が台座から転がり落ち、偶然にも衝撃でふたが開きイコは棺から放り出された。
巨大な城にたった一人取り残され、自由になったイコ。
イコはあてもなく城の中を歩き始めた。
しばらく歩いていると天井からぶら下がる檻のようなものを見つける。
中には真っ白い女の子がうずくまっています。
イコが少女を檻から出すと、黒い影のようなものが少女を連れ去ろうとする。
イコは黒い影を追い払い少女に手を差し伸べる。
「一緒にここから出よう」そう語りかけながら。
ゲーム概要
アクション要素の強い謎解きゲーム。
主人公のイコを操作し、ヒロインのヨルダと協力しながら城の脱出を試みます。
ヨルダは常に謎の黒い影に狙われており、イコはその影を撃退しつつヨルダの不思議な力を借りて先へと進んでいきます。
イコ自身は強い肉体と運動能力を持っていますが、一方のヨルダは普通のか弱い少女です。
イコひとりならば簡単に行ける場所も、ヨルダがついてこられるよう工夫しなければなりません。
またヨルダの不思議な力によって稼働するギミックや仕掛けも多く存在する為、互いに協力し合い進めていくことが重要になります。
とは言ってもイコがヨルダにお願い出来るのは「自分のところに来てもらう」ことと「待っててもらうこと」、そして「手をつなぎ一緒に走る」ことです。
ヨルダの手を取り引っ張り進んでいく内に、いつしか彼女がかけがえのない存在となっていて、その手を絶対に放すまいとしている自分に気が付きます。
手を取り引っ張るというゲーム内での行為が、ここまでキャラクターに感情移入しプレイに没頭させるとは思いもしませんでした。
あなたにとって大切な存在になったヨルダ。
共に道を切り開き、城を脱出出来るかどうかは、あなた次第です。
レビュー
レビューまでの総プレイ時間:10時間
ゲームの魅力や楽しいポイント
歯応えのある謎解き
イコの身体能力、ヨルダの不思議な力、謎の黒い影の脅威と、複数の要素を加味しながら目の前の課題を突破していきます。
単純な謎解きとの違いはアクション性はもちろんですが、二人の距離や位置関係がゲーム攻略に大きく影響するということ。
例えばイコがヨルダと大きく離れた場所でギミック攻略に奮闘しているとします。
もしその時にヨルダが黒い影に襲われ連れ去られそうになった場合、イコとの距離が離れ過ぎていると、ヨルダの救出が間に合わずゲームオーバーとなる危険があります。
謎解きをしながらも常に別の場所で危機に晒されているということです。
それがこのゲームに欠かせない緊張感を生み、プレイへの集中力を自ずと引き上げています。
場所によっては絶対に離れなくてはならない場所もあり、ヨルダをどこに待機させておくかなど、ギミック的な謎解き以外にも考えさせられます。
バイオハザード4のアシュリー同伴時のプレイに似ていますが、より優しさに焦点を当てたゲームと理解していただけるといいです。
美しく謎の多い城
他のゲームにも感動する風景や自然の描写はありますが、建物の屋内でそれを感じる作品は珍しいと思います。
美しく幻想的な城の一部に目を奪われるのは一度や二度ではありませんでした。
その場所を二人で歩く、その場面、その二人の姿が忘れられない程、印象的に映りました。
きっとプレイした誰もが記憶に残る情景を手に入れることでしょう。
カスタマイズ性
ほとんどないです。
ゲームを最後までプレイしても変更出来る要素は携帯する武器くらいのものでした。
難易度
一部謎解きの難しい場所や、高いキャラクター操作技術が必要な場所があります。
しかし、ゲームオーバーによるやり直しが発生しても、すぐ直前からのリスタートでストレスもなく、難しさは感じづらくなっているように思います。
ただ、プラチナトロフィー獲得を目指すといくつか鬼門の課題があり、難易度が跳ね上がります。
遊びやすさ
ちょこちょこ遊ぶには向いていません。
セーブポイントも限られていて、もちろんそこへ辿り着くまではセーブ出来ない仕様です。
謎解きゲームの性質上、謎が解ければサクサク進めるのですが、解けなければ長時間苦しむことになります。
じっくり考えないと解けない謎が比較的多いので、サクッとプレイしてサクッとやめると言ったプレイスタイルには適していないでしょう。
ボリューム
ボリュームは多くはありません。
言ってしまえば一周目で謎を解いてしまえば、二周目以降は効率良く謎を解くだけの作業になります。
二周目だからこそ気がつく要素なども特別ないと思います。
もちろんゲームの世界観は素晴らしいものがあるので、忘れたころにまたプレイしたくなる魅力はありますが、それを加味しても本編のボリュームは少ないと言わざるを得ないでしょう。
本編以外にゲームモードがあるわけでもないので、短い人ならクリアまでの4、5時間しか遊べないかもしれません。
自由度
ほぼないと言っていいと思います。
決められたギミックを決められたように動かし攻略するだけです。
多少手順を変えて攻略することが可能な場所も存在しますが、基本的には手順も一方方向です。
ヨルダとの行動選択で「一緒に行くか」「待機させるか」である程度の攻略の自由があるとも言えますが、これも最終的には有効な方法が絞られるため、完全に自由な選択とは言い難いですね。
ゲームを有利に進める為に役立つプレイヤー能力
当然ですが謎を解き明かすための思考力が必要になります。
むしろ思考することが苦手な方はクリア出来ないと思います。
一部高いアクション性が絡むギミックも存在するので、一定の操作スキルも必要になるかもしれません。
テンポの良さ
城からの脱出を試みるゲームですが、実際には城の出口に向かっているのかは全然わかりません。
なので謎を解き次のシーンに移行しても、自分が今どこにいるのか、出口に対して近づいたのかどうかまったくわからず、テンポよく進んでいてもそう感じられる機会はあまりないと思います。
何かゲームを攻略していて感じられる進捗度のようなものがあれば良かったです。
熱中度
序盤わけがわからない状態が続き、変な黒い影に追いかけられ、謎だらけの城をさまよいます。
熱中したというか、わけがわからなくてとにかく進んだという感覚しかありません。
中盤以降からやっとストーリーも動き出し、その後の展開が気になり始め熱中出来たように思います。
やり込み度
ほとんどありません。
プラチナトロフィー獲得くらい。
プラチナトロフィー獲得の為に必然的にある程度のやり込みは必要になってきます。
それ以外には特にないでしょう。
まとめ
総評まとめ【70点】
一般的には高い評価を受けている本作ではありますが、残念ながら自分にとってはそこまで楽しめた作品にはなりませんでした。
魅力で挙げたように、複数の要素を加味しながら攻略する謎解きや、よく表現された不思議な世界観の霧の城も素晴らしいとは感じますが、ただ、あまりに解答が一方向の謎やギミックにより自由度がなくなってしまい、それ故謎の攻略にも「やらされている感」が出てきてしまったのが原因だと感じます。
本作が本作独特の特別なゲーム体験が出来ることは間違いありませんし、そこが最高の魅力でもありますが、特別なゲーム体験と、ゲーム自体の面白さが必ずしも一致するとは限らないということを改めて感じた作品になりました。
最後までご覧頂きありがとうございました。