基本情報
PS3版「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」ソニー・コンピュータエンタテインメント
発売日:2010年2月18日
ジャンル:サイコ・サスペンス
プレイヤー人数:1人
ゲーム概要
愛する人を守るために、あなたはどこまで自分を犠牲に出来るのか?
その答えを知りたければ、このゲームをプレイするといいでしょう。
奇怪な殺人鬼に命を狙われた息子を救出するため、その殺人鬼の指示に従い自らの身も心も傷つけていく主人公。
そして、その事件に巻き込まれる一人の女性。
折り紙殺人事件の真相解決に挑む私立探偵とFBI捜査官。
それぞれにバックグラウンドを持つ個性的なこの4人のキャラクターを操作しながらプレイしていきます。
4人は同じ世界、同じ時間軸を生きていて、ひとりひとりの取った行動が他のキャラクターへ影響を与えます。
各キャラクターの行動が後にどんな影響を与えるかはわかりません。
ジャンルがサスペンスであるように「後になって繋がる」といった感じです。
「アクションサウンドノベル」そんな新ジャンルを新たにプレイしたような感覚になる作品です。
従来のゲームではシナリオの分岐点でプレイヤーにコマンドによる行動選択を迫り、主人公に感情移入させていくものが主流でした。
しかし本作では思考、発言の選択はもちろん、その選択に対する代償としての行動を自らの操作で行わなければいけません。
本作の代表的なシーンとして、犯人から「指を切り落とせ」という指示が課せられますが、当然そんなことはしたくないですが息子の命も心配です。
ここでの選択では「指を切らない」という選択も出来ます。
しかし問題は切るという選択をした時です。
従来のゲームであれば、恐る恐る「指を切断する」という選択肢を選べば、その行動自体はゲームの中の描写として勝手に行ってくれました。
しかし本作ではそうもいきません。
コントローラーのボタンや、ジャイロセンサーを使った動作で実際に指を切断する行為を自ら行わなければならないのです。
これは単に行動選択をするという今までのゲームとは一線を画した画期的なアイデアだと感じました。
その他、どんな行動にも自身の心理が反映され、雑に扱えば雑に動くし、優しく動かせば優しく動かせるなど、キャラクターの行動はまさにプレイヤー次第といった感じです。
取れる行動自体は決められたものから選択する形ですが、「行動の取り方」をここまでプレイヤーに委ねられる作品もまた少ないのではないかと思いました。
レビュー
レビューまでの総プレイ時間:30時間
良かった点
ストーリー
まず、ゲームジャンルがサスペンスなのですから、当然ストーリーは良くなくてはなりません。
その点で本作は十分及第だと感じました。
すべての操作パートがストーリーと密接に繋がっているわけではなく、結果的にそれがかえって本筋をうやむやにし、推理を困難にさせます。
人によっては余計なパートだと思うかもしれませんが、重厚なストーリーを堪能するための良いスパイスだったのだとクリア後には感じました。
マルチエンディングタイプのゲームではありますが、どの結末も記憶に残る、衝撃的なものであったことは間違いありません。
表情
このゲーム、キャラクターの表情表現が凄いです。
ロード画面が「画面いっぱいにズームしたキャラクターの顔」っていうのでまずビックリしましたが、その肌の質感、シワやちょっとした表情の変化にも驚きました。
このゲーム、キャラクターの喜怒哀楽の変化が非常に大きいです。
また選択によっては「嫌だ!」「ごめん」「ちくしょう!」「ありがとう」など、プレイヤーが言いたくなる場面が多々ありますが、操作キャラがその言葉を表情で代弁してくれます。
他のゲームにはないどこか生ぬるいリアルな表情に終始楽しませてもらいました。
リアルな行動操作
本作で一番の画期的なゲームシステムかと思います。
車のキーを回すのにスティックを半回転させたり、牛乳パックを振るのにコントローラーを振るなど、その場のキャラクターが取る動作に限りなく近い操作方法が毎度求められます。
更には行動のスピードもスティックの入力速度やコントローラーの傾け速度で調整できるため、「素早く」「ゆっくり」など、自分の求める行動速度を自由に再現出来ます。
慎重にヒゲを剃ったり、息子の前にゆっくり座ったり(超ゆっくり腰を落としたら笑えるくらい気持ち悪かった)。
決断が迫られる中、プレイヤーとキャラクターが同期して行う行動操作は、他のゲームを圧倒する程の没入感、感情移入を生んだと思わされました。
悪かった点
操作が難解
リアルな行動操作の弊害とも考えられますが、操作が簡単とは言い難いです。
通常移動もスティックで進行方向を調節し、R2で歩きます。
R2で歩くと表示された時、「リモートコントロール・ダンディ」を思い出しました。
カメラワークが初代バイオハザードを彷彿とさせる定点カメラ式が多かったので、混乱を避けるための操作方法だったのだろうとは思うのですが、余計に混乱する場面もありました。
執拗に要求してくるリアルな行動操作
良い点に挙げておいて矛盾するようですが、どんなに画期的なシステムも執拗に要求されるとウザくなります。
特に緊迫した場面でもなく、扉を開けたり閉めたり、箱を開けたり閉じたり、実際いちいち毎回要求されると嫌になってきます。
サクサクとゲームを進めたい人には苦痛と感じられるかもしれません。
終始陰湿なイメージ
「HEAVY RAIN」というタイトルからも想像はつきますが、ゲーム内は終始雨。
明るい印象を受ける場面はまずありません。
サスペンスなので別にそれでもいいとも取れますが、シナリオを楽しみたいプレイヤーはともかく、ゲームを楽しみたいという人には勧められるか疑問を感じます。
下調べがついていてゲームをプレイする人であれば問題ないと思いますが、「傑作と名高い」「良作」という言葉に飛びつくには、あまりに人を選ぶゲームであることは否定出来ません。
まとめ
総評まとめ【評価:72点】
作品の完成度や独自性、魅力的なストーリーを考えると確かに良作です。
しかしその独特な操作性に執拗にこだわったあまり、敷居を上げることになり、プレイヤーを選ぶ作品になってしまった感があります。
ストーリーはサスペンス好きなら誰でも楽しめるような内容であるため、もっと万人がプレイしやすい仕様になっていれば、より多くの人に本作の良さが浸透したと思います。
敷居を乗り越えプレイ出来れば、本作独特のゲーム体験を楽しめることは間違いないので、気になっている方は是非一度プレイしてみて欲しいです。
実際にプレイすることで真価を発揮するゲームシステムとストーリーで、「やらないと良さがわからない」というのもこれまた敷居が高いですが、飛び込んでみる価値はあると思います。
評価としては72点ですが、煩わしい操作や毎回要求される面倒なリアル操作が問題なのであって「入力操作した方向に歩いてくれて、リアル操作はここぞという個所に配置」してもらえれば、概ね満足出来る作品にはなっていました。
何度も言いますが、ストーリーが秀逸なのは間違いありませんので、サスペンスが好きな方、アクション、サウンドノベル両ジャンルとも好きな方には是非ともプレイして頂きたい作品です。
最後までご覧頂きありがとうございました。