基本情報
PS3版「Flowery」ソニー・コンピュータエンタテインメント
配信日:2009年2月12日
販売価格:762円(税抜)
ジャンル:ポエティックアドベンチャー
プレイヤー人数:1人
ゲーム概要
プレイヤーは一枚の花びらとなり、ステージ毎に描かれた様々な夢の世界で、まだ咲いていない花のつぼみにふれることで、その花を咲かせていきます。
咲いた花の一部がまた花びらとなり、プレイヤーの操作する花びらへと集まります。
やがて花びらは群れとなり、より力強く、より大きな風に乗りながら、さらにたくさんの花を咲かせていきます。
夢の中という設定で描かれた不思議な世界で、あなた自身の手で目的を見つけ、この世界を少しづつ紐解いていくインタラクティブゲーム。
時間制限もゲームオーバーもない自由な世界で、あなただけの夢のシナリオを作ってみましょう。
基本のゲームプレイは、操作する花びらをつぼみにふれさせ花を咲かせ、その時に得られる花びらを増やしていき、次のルートを解放していく。
最終的な必要枚数に達することでゴールへのルートが解放され、大きな花の群れでゴール地点へと到達すればクリアという流れのゲーム。
表現したい世界観と雰囲気を大切にし、ストレス要素をほとんど排除した癒しゲーム。
花びらの操作方法もいたって簡単で、進みたい方向(風を送る方向)をコントローラーの傾きで決定し、コントローラーのいずれかのボタンを押して風を送る。これだけ。
ひとつの小説や映画を楽しむようにプレイするゲームで、難解な操作や高い集中力、思考力を必要とするゲームに疲れてしまった時にプレイすると良いと思えるそんなゲームです。
レビュー
レビューまでの総プレイ時間:7時間
ゲームの魅力や楽しいポイント
気の向くままに、風に乗る
つぼみにふれることで咲く、様々な種類の花。
その美しさと優しさにふれながら、花びらは次第に大きく群れを成していきます。
たくさんの花びらに風を送りながら、気の向くままに空を飛び回る。
風に吹かれ舞う浮遊感は本作独特の感覚で、とても気持ちよく感じました。
高速で低空飛行したり、大きな上昇気流で大空に舞い上がりあたりの景色を眺めたり、本当に自由かつ爽快で優しい風を感じることが出来ます。
相反するイメージの融合
ステージを進める毎に、本作では自然と都市の対比的表現が散りばめられていることに気がつきます。
青く広い草原、岩山の峡谷、雨の降る暗い廃墟に高層ビル。
時には険しい坂や崖、気流や風のトンネル、はたまた巨大な風車や崩れた電線など、様々な環境が障壁となりプレイヤーの前に現れます。
本作は、作者がアメリカを旅していてインスパイアされ形となった作品で、もともと中国の大都市で育った作者は、アメリカの永遠に続くと思うような緑の草原や風車に驚いたと言います。
都市に住む人間であれば誰もが共感出来るその思いが、大自然とふれ合う魅力を作者に気がつかせたそうです。
しかし、その一方で本当の自然を体験した作者は、これまでの都市生活にも恋しくなったそうです。
そこで、自然と都市という相反する二つのものへの愛着を表現すべく、本作の制作に取り掛かかりました。
どちらの魅力にも理解を示し、且つ大切に扱う気持ちで本作は作られています。
だからどちらか一方ではなく、どちらも欠けてはいけない存在なんだと、プレイしていて改めて考えさせられる作品になっています。
「面白くないゲームだな」と感じるプレイヤーも少なからずいると思います。
しかし、せっかくプレイするのであれば、この作者の表現したかった世界と、伝えたかった気持ちを感じてみて欲しいと思います。
不満要素
あくまでゲームとして見ると、正直多くの人が満足出来る作品とは言い難いです。
しかし、少しのプラス要素があれば、より遊び易く誰にでも楽しめる内容のゲームになったと思います。
以下に本作で感じた不満要素を取り上げ、その上でどのような要素をプラスすれば良いかを合わせて検討してみたいと思います。
本編以外にゲームモードがない
あくまで雰囲気と世界観を楽しみ、プレイヤーに癒しを与えるゲームですが、さすがにシンプル過ぎます。
本作のゲームシステムから考えれば、ステージクリアまでの時間を競う「タイムアタックモード」や、花の種類毎に付与されたポイントによってゴール時のスコアを競う「スコアモード」などがあっても良かったと思います。
あくまで作品本来の楽しみ方を満喫した上でこれらの要素を解禁すれば、作品の意図も損なわず、ある程度のやり込み要素としても活かせたでしょうし、より長く楽しめることにも繋がったのではないかと思いました。
収集要素がない
せっかく多くの種類、多くの色の花を咲かせ、咲かせることでの達成感も得られる美しい開花エフェクトに仕上げられているのに、もうひとつプラス要素がないのは勿体なく感じます。
例えば「花の種類を集める収集要素」があっても良かったと思います。
本作では最終的にゴールまでのルートが解放されれば、それ以降の花の開花はプレイヤーに委ねられています。
まだ残っているつぼみにふれて、大群の花びらでゴールに向かってもいいし、必要最低限の花びらでゴールしても構いません。
プレイヤーの満足した時点でゴールに向かえるよう配慮されたシステムです。
そんな中、私は「花の収集要素」によって更に花の開花を進める意欲をそそられますし、長く遊べることにも繋がるような気がしました。
本来、余計なことを考えずにプレイ出来ることこそが良さであるゲームですが、提案した他のゲームモード同様、作品本来の楽しみ方を満喫した上でなら、これらの要素はプレイヤーにとってプラスの要因として働くのでは思います。
まとめ
総評まとめ【65点】
ゲームとしての評価がとても難しい作品です。
ただ作品独自の魅力は確かに存在するゲームではあります。
一般的な攻略ゲームと同じような評価は出来ませんが、リラックス出来るゲーム体験、風に乗る爽快感は確かに心地よく感じる部分でした。
外敵の脅威から逃れることも、課題達成の圧力に悩まされることもなく自由気ままに遊べます。
ある意味、ここまで何も考えずにゲームプレイに没頭出来る作品も少ないのではないでしょうか。
本作独自のゲーム体験が得られることは間違いなく、ゲームをプレイすることで自然や都市の便利さに今一度気づかされる不思議な魅力の詰まった作品でした。
最後までご覧頂きありがとうございました。